<特別投稿>今帰仁城跡や周辺の発掘、修復や管理をおこなう文化財係り。専門家の目がとらえた今帰仁城跡。

世界遺産登録10年(中)

進められる観光開発とグスク周辺の文化財群の調査

史跡の復元と観光整備

 世界遺産登録前より、各資産では文化財保存修理事業が行われている。事業では、崩れた石垣の復元や、戦災などによって改変された史跡景観の回復が行われている。今帰仁城跡でも城内にあった駐車場が撤去され、往時の景観に復元されつつある。
 各資産で整いつつあるものが、観光客の受け入れ態勢である。世界遺産周辺整備事業として、座喜味城跡周辺では、喜名番所跡の復元や登城道「座喜味城通り」が整備されている。勝連城跡、今帰仁城跡では休憩所が入口近くに配置され、駐車場が整備された。斎場御嶽では、緑の館・セーファなどの歴史学習体験施設の充実も見られる。中城城跡でも県営公園の整備によって駐車場の整備や、歴史の道などの整備が進められている。

1.今帰仁村グスク交流センター.JPG

▲写真 今帰仁城跡近傍に建設されたビジター施設

 

周辺文化財の再発見と活用

 前述した整備に伴い、各資産の周辺では文化財調査が進められている。いずれの調査とも、グスクを中心とする集落や道などの調査で、存在は知られていたが、本格的な調査が行われたのは世界遺産登録後のことである。このような世界遺産登録資産を中核とする、文化遺産群の把握は近年最も進められる調査分野となっている。
 世界遺産登録資産単体の調査や復元にとどまらない取組には、資産をコア施設として捉え、点から線、線から面への観光への取り組みも背景の一つにある。今帰仁村では、観光リゾート振興計画に「山北(北山)王城を中心とする文化財・史的景観の活用」が盛り込まれている。南城市も「南城市歴史文化基本構想」の策定を進める。構想は、文化財群をゾーンニングし、歴史文化遺産を取り巻く環境の充実と魅力向上が目的となっている。


地域づくりの核として

 整備にとどまらずこれらの幾つかの地域では、地域に根差した魅力的な取り組みがみられる。「座喜味城通りふれあい祭り」は地元の若者が中心となる実行委員会によって開催され活況と聞いている。中城城跡に近接する集落、北中城村大城の花咲爺会の活動も景観づくりに余念がない。勝連城跡の上演から生まれた現代版組踊「肝高の阿麻和利」は世界遺産登録前の初演以来、公演回数177回を数え、観客動員は延べ11万余人を達成している。また首里城で行われる各種行事は冊封使行列・冊封儀式、古式行列などは県を代表するイベントして定着している。また首里城で行われるイベントそのものも楽しみの一つだが、衣装や道具の復元などを通して伝統工芸技術の発展にも大きく貢献しているところも見逃せない。

 

 

北山の風演劇の様子.jpg

▲写真 今帰仁城跡で開催された史劇


遺跡案内ボランティア

 各自治体では、住民や来訪者に歴史や文化をより身近に感じてもらえるような遺跡見学会や文化講座の充実も見られる。中でも活躍が著しいのが地域住民を中心とするボランティア活動である。彼らの活動の柱は遺跡案内だが、これ以外にも清掃美化活動や、城内外の文化財や植物などに看板を設置する活動。あるいは、会員自身でホームページやブログを作成したり、会誌を発行したり、茶会を開催するなど、日頃案内している遺跡を取り巻く歴史情報の提供や掘り起こしが積極的に行われている。

来訪者の声

  地元住民各自治体によって各資産の整備や活用の取り組みが進められる。しかし、今帰仁で実施したアンケート調査によると、住民が整備したいと思っていることと、来訪者が整備してほしい(あるいはしてほしくない)と思っていることには、若干距離があるという結果が得られている。遺跡整備にわかりやすさと歩きやすさを求める地元と、慎重な整備と自然樹林の保全を求める来訪者という構図がある。また、催し物の開催を要望する地元と、来訪者アンケートではイベントについても控え歴史環境を優先すべきとの意見が見られるなど、地元がこれらの意見にどのように向き合うかも今後問われている。

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