秋に出現するクワガタムシ

写真の昆虫は、クワガタムシですが、ただのクワガタムシではありません。秋に出現するクワガタムシで、「オキナワマルバネクワガタ」といいます。タテヅノマルバネクワガタの仲間で、雄の大あごが大きく発達した個体は、細かな歯が上に向きます。写真の個体は、かなり大きいもので、大あごの細かい歯も上の方に向いています。このような個体は野外ではなかなか見ることは難しく、大変珍しい。さらに、はねも丸みを帯びているので、「まるばね」という名前があります。このクワガタムシは、沖縄島では主にやんばると呼ばれる地域にのみ分布し、今では国頭村に集中しています。なぜ、やんばる地域にのみにしかいないのか、それには理由があり、このクワガタムシの生態と関係があります。オキナワマルバネクワガタの幼虫は、国指定天然記念物のヤンバルテナガコガネがいるようなイタジイなどの大木のうろの中で、フレークという腐食物を食べて成長します。つまり、イタジイの大木があるような森林地帯でのみ観察されます。秋になると、成虫になったクワガタムシは、木から離れて、周囲を徘徊します。林道で多く見られるのが、ちょうど9月から10月の季節です。この時期に、本土の方から、このクワガタムシ採集目的で、レンタカー(わナンバー)を借りた人たちが生息場所付近を夜昼問わず、うろうろと走り回ります。なんとも、異様な光景です。一日の間に、何十台もの乗用車が、狭い林道を往復しているのです。このクワガタムシは、本土の方では高価な昆虫として出回っています。研究ではなく売買目的の採集は、今後、ひかえていかないと、いずれ個体数の極端な減少をまねき、ヤンバルテナガコガネのような昆虫となってしまうかもしれません。夜間は、林道上には、さまざまな動物たちも出てくるので、そのような動物たちが車に轢かれる危険性もあります。今年になって、幻と言われていた国指定天然記念物のケナガネズミも、林道沿いで観察頻度が多くなっており、交通事故死の報告も多数あります。林道を夜間に走行する際には、細心の注意が必要です。このクワガタムシは、分布する島では、個体数の減少を懸念し、採集禁止の措置をとっている地域もあるそうです。貴重な昆虫類や動物が、生息場所で、安心して暮らせるような人間側の配慮が必要だと思います。

okinawamarubanekuwagata_6930.jpg

カテゴリ